「恋愛事情って言われても」



渋い顔で手元のウーロン茶に手をのばす桐原さん。明らかに面倒くさそうだ。



「じゃぁ好きなタイプは?」



そこで間髪入れず突っ込んだのは、意外にも莉央ではなく牛奥だった。



「ちょっと牛奥…」


恋愛ハンターモードの莉央ではなく、牛奥ならまだ止められるかもしれない。


そう考えて窘めるように声をかけたが、やけに真剣な瞳で桐原さんを見つめる牛奥は、私の声など全く耳に入っていないようだった。


ちょっと、なんで牛奥までそんなに興味津々なわけ?



「好きなタイプ…」



桐原さんは真っすぐ自分を見つめる牛奥の瞳から面倒くさそうに視線を逸らして、



「…いなくならない女?」



少し考えてから、ボソリと呟くようにそう言った。




“いなくならない女”




それって…



「そういうお前はどうなんだよ」



気怠そうに腕組みをする桐原さんの表情からは、なんの感情も読み取れない。



それにしても、意外だ。桐原さんから質問をするなんて。これ以上自分に質問をされないようにするための策だろうか。



「えっ、お、俺ですか!?」


途端に動揺しだした牛奥が、なぜかチラリと横目で私を見た。いやいや、私に助けを求められても。知らないよ牛奥の好きなタイプなんて。



「そ、そうだなぁ…」


暫く逡巡した牛奥は



「すごい鈍感でイライラするけど…なんか構いたくなる奴、ですかね」



顔を真っ赤にして、そう言った。