「何か言ったらどうなの」
「………」
「まぁいいわ」
黙ったままの愛良ちゃんに、その女性ーー愛良ちゃんのお母さんは、口角を僅かに歪めた。
「何があったか知らないけど、よかったじゃない、辞めるきっかけが出来て。バレーボールなんてあんなお遊び、いくら続けていても無駄にしかならないわ」
耳を疑った。
この人、本当に愛良ちゃんのお母さんなんだろうか。
自分の娘がこんなに一生懸命になっていることを、こんな言い方するなんて…
愛良ちゃんは尚も黙ったままでいる。
いつも私にそうするように、何か言い返したらいいのに。
だけど母親の言葉に納得していないことは、その強く握った拳から伝わってくる。
でも彼女はそれに気付いていないのか。
黙っていることを肯定と受け取ったらしく、「部活を辞めた分時間が出来るでしょう。家庭教師を一人増やしますからね」と冷たく言って部屋から出て行こうとした。
…私みたいな部外者が口出しすることじゃきっとない。だけど
「ちょっと待ってください」
私には、黙ったままでいることなんて出来なかった。



