甘い恋じゃなかった。





「私、部長だったんだよね」



「え、そうなの?すごいじゃん!」




確かに愛良ちゃん、しっかりしているし、部長とかすごく向いていそうだ。



「しかも結構強豪校だからさ。それなりに、勝たなきゃとか、先輩たちの顔に泥塗れないとか、色々プレッシャーがあるわけ。ま、アンタには分かんないだろうけど」



確かに、私は一度も経験したことのない悩みだ。
ちなみに“長”がつく役職をやったのも、小学生時代の登校班の班長くらいだ。



「だから絶対勝とうと思ってた。勝たなきゃいけないと思ってた。自分だけが頑張っている気がして、周りが手を抜いているように思えてきた」



愛良ちゃんが苦虫を嚙み潰したような表情で、無理やり笑顔をつくる。



「その結果見事にボイコットされた。副部長の茉希には辞めろって言われる始末。ほんと笑っちゃうよね」



…なんで無理やり笑おうとするんだろう。


まるでこんなこと大したことないって、自分に言い聞かせているみたい。



「ま、もう辞めたからいいんだけど…」



「辞めてないでしょ」



愛良ちゃんが動きを止める。



「退部届まだ持ってるじゃん。だからまだ、何も終わってない」



…あ、やばい。



言ってから気付く。




これは、勝手にカバン覗いたこと、絶対に怒られる。




しかし予想に反し、愛良ちゃんは何も言ってこない。



これは…やっぱり相当、元気がない。




不意に、マドレーヌを見る愛良ちゃんの表情を思い出した。




「いいこと思いついた!」



「…は?なんなの急に」




愛良ちゃんがノロノロと顔を上げる。




「いいとこ行きましょう、今から!」