甘い恋じゃなかった。






「………」



何かを考えこむような表情で、じ、とその場に立ち尽くしたままの愛良ちゃん。



「愛良ちゃん…?」


呼ぶと、ハ、とした表情で私を見、



「…帰る」


そう言い残すとドンと私に肩をぶつけて歩いていった。



「ちょっと!?」



慌てて追いかける。


人混みの中見失わないように着いていくのに必死で、止める暇もなかった。










土曜日の夕方の電車内は、まだ時間が早いからか比較的空いていて、二人とも座ることができた。




愛良ちゃんは相変わらず難しい顔をして黙りこくっている。


だから私も黙ったまま、ボンヤリ窓の外を眺めていた。




「…聞かないの?」



暫くして、愛良ちゃんがボソッと呟くように言った。



「何が?」


「…さっきのこと」


「別に。話したいなら聞くけど」




チ、と忌々しそうに舌打ちをする愛良ちゃん。



「偉そうに」



それから、電車の走る音の隙間を縫うように、ポツリ、ポツリと話し始めた。