桜はやがて、徐々に男子の様な振る舞いになってゆく。
私はどちらかと言うと、邪魔とさえ感じて居た故に、一層の事、妹が『弟』だったらまた違うのかと問う。

…真冬んトコは、弟か。
ウチは妹だからな。

ぼんやりと遠くを眺めていた。
今日も桜は賭事をして、未だ幼い者達から信じられない額を手にしている。
その耳障りな声、その口調、友人の脅えながら笑うトーンが気に障る。

桜「やった、また勝ったー!オレの勝ちだね!お前ら早くテーブルの上に負け金置けよ。」

嫌味な事に桜はゲーム、賭事は強い。
根性もない癖に、調子に乗って、その儲けた金から酒代や煙草代にあてている。

空を見上げたら、カラスと目が合った。
そのままじっと、私の方向を見ていた。

桜「はーい、またオレの勝ちー!」

私は苛立ち、妹の部屋に入った。

香澄「…うっせーな!!黙れクソガキ共。」

桜にとって私は怖いとかの次元を超えた、其れを持っていた。
なので私の大した事も無い怒鳴り声で全員が黙る。

窓の外を見直すと、カラスが居なくなっていた。
自由に飛び回り、何処かへ消えて行った。

私は煙草に着火し、フと過ぎったあの顔に電話した。

プルルルルル…

香澄「あっ、も…」

受話器側で若い男の声がした。
どうやら騒いでいる様に感じた。
そしてすぐに声を発した。

真冬「ごめんごめん!弟達がうるさくって。まぁ、毎度の事だから気にしないで。」

香澄「…例の弟?」

真冬「そうそう。いつもなの。」

香澄「ウチもいつもだよ。…妹なのにね、『オレ』とか言っちゃって。」

真冬「井川さん…じゃなくって!香澄前言ってたもんね。屋上の時。」

香澄「そうそう。ウチもうるさいからさっきピシャリと黙らせてやったけどね。それよりさ、こんなつまんないし、どっか出掛けない?」

真冬は何だか少し、困った様子で話した。

真冬「…ウチは、御免ね。出れないんだ。ホントごめん。今度、見計らってみる。」

香澄「…そ…そうだよね。普通は中学生が夜になんか家出て行ったりしないよね。」

言い放ち、私は電話を切った。
少し羨ましいとも思った。

私は干渉されて居ないから、その感覚が解らない。
やっぱり、吉井真冬と云う人間とは友達になんてなれないと感じた。

その時だ。
考えてる隙もなく、吉井真冬から着信があった。

真冬「もしもし…!!香澄ちゃん?さっきごめん!やっぱり遊びに行こっ、私も気晴らししたいし。」

…気晴らしねぇ…
どんな感じなんだろう。
貴方はどんな事を抱え、気晴らすのだろう、と。