「…亮樹先生。」
聞こえるか聞こえないかの声で、実優はつぶやく。
そして、涙をボロボロとこぼし始めた。
「実優ちゃん?」
きゅっとくちびるを噛み締めて、立ち上がった。
「さっきはごめんなさい…
今日は、…帰ります。」
ペコッと頭を下げると、走り去っていった。
実優がいなくなった今、翔の泣き声を押し殺す声しか聞こえない。
「っ……」
亮樹は、そっと頭を撫でた。
「せっかく来てくれたんだから…翔だけても、もう少しだけ桜に会ってくれない?」
「…ん。」
再び病室に戻ってくると、ふたりはイスに座った。
しばらく、しんとした空気が流れた。
「…翔、ありがとな。」
静かに首を振った。
「そんなの、今さら…。
俺は小さいときからの付き合いだし。」
「ううん。たとえ幼なじみだからって、ここまで桜のこと考えてくれるのはすごいよ。
桜も、翔がいてくれたからここまで頑張れてるんだよ。」
酸素マスクと、点滴と…いろんな機械がつけられている桜の姿を見て、
自分の力不足に余計に泣きそうになった。


