嬉しくて振り返っても、




誰もいなかった。






しーんとしてる。ううん、静かすぎる。



それに、もう夜なのかな?暗いし…





『ごめんなさいっ!』



突然聞こえてきた女の子の声。


張り詰めた空気。




な、なに……だれ?



思わず声のする方に行くと、そこはリビングだった。



『うん。大丈夫だよ。』


この声、亮樹兄ちゃん?



やっぱりいたんだ!誰と喋ってんだろ…



その様子を見た瞬間、あたしは凍りついた。


全身に鳥肌が立って、時間が止まったよう。




『やだっ。亮樹兄ちゃんっ…本当にごめんなさいっ!』



なんで…………



なんで、あたしがいるの?


あたしがふたり…?



泣きながら、亮樹兄ちゃんの服の裾を握って謝ってるあたし。



どうして…どうして…





『亮樹兄ちゃんは…あたしのことどう思ってる?どういう存在…?家族…でいいの…?』




……この言葉、知ってる。


治療始める前に、あたしが言ったの。


不安で、不安で亮樹兄ちゃんを家族じゃないって傷つけた時の。



あたしは思い切って、亮樹兄ちゃんの手をつかもうと手を伸ばした。




…けど、それは届かなかった。



まるで、映像みたいに。


あたしは、違う世界から見ているみたい。