「…だから、ここまでの過程が、先生が1番わかっているのに…。

私も…わかります、けど…。

感情が優先して、判断をくだすなんて…先生らしくありません…。」





感情が、優先……。



俺の中で、そんなことないと否定はしたが、実際その通りだった。



それは、心の底で、わかってる。




医者として、より桜のことをずっと見てきた俺にとっての感情のほうがすごく大きい。










医者としての判断は……下し…たくない。




体の奥から、何か大きい苦しい波が来る。




俺がなにも言わないでいると、茜さんは足早に会釈をしてその場を去っていった。





ひとりになり、しーんとした処置室のベッドに座る。



そのまま後ろに倒れて寝た。



「はぁー」




俺の…力不足だ。



桜の病状をここまで悪化させたのも。




俺が…もっといい医者だったら。


いや、そもそも俺じゃなく、他の医者が担当だったら。






今更言ってもなんにも、ならないことをぐるぐると頭の中を駆け巡った。



思いっきり髪をクシャクシャっとかくと、また体の力を脱力させた。





「このまま、ぜってぇ諦めねぇ…」




検査結果の紙をグシャッと握った。