怖くて、足が動かなかった。
ここから、1歩も動かないの。
ビニールカーテンで囲まれたベッドから目を離せない。
亮樹兄ちゃんはカーテンを開けると、手招きした。
「おいで、桜。大丈夫だから。」
トントンと、布団を叩いた。
仕方なく近寄ると、ベッドに座った。
ツンと鼻につく消毒液のにおい。自分のまわりだけ、カーテンに囲まれてて、怖い。
「桜?今日からここがお部屋だよ。
... いい?ここで治療してる間は、トイレ以外、極力ベッドから出ちゃだめだよ。」
... へ?出ちゃだめ?なんで... 。
こんなビニールのカーテンで、ずっと過ごすの?
亮樹兄ちゃんを見ると、不安そうにあたしの頭をなでた。
「ここにいる間は、ちゃんと言うこと聞くんだよ?
俺も茜さんも、必要以外にこの中に入れないからね。」
「... え。なんでっ... 」
なんで。なんでよ。
来てくれないの?手を握ってくれるのもないの?
... ... これじゃほんとに別の世界だよ。
「あたし、ひとり?」


