嫌な時が過ぎるのは早くて、もう移動の時間だ。
「桜、移動しようか。」
亮樹兄ちゃんの優しい声。
あたしはゆっくりと立ち上がると、リュックと、壁に飾ってあったコルクボードを持った。
亮樹兄ちゃんは、写真のいっぱい貼ってあるコルクボードを見て、笑った。
「ふふっ、これ桜の宝物だもんな。」
あたしはコクッとうなずいた。
お部屋を出て、無菌室へと向かう。
一歩一歩が重くて、途中で立ち止まってしまう。
そのたびに、亮樹兄ちゃんが声をかけてくれた。
「大丈夫だからな。大丈夫。な?」
そうなだめる亮樹兄ちゃんの白衣のすそをぎゅっと握って、歩いた。
ガラガラッ...
「っ... なに、これ。」
ベッドのまわりを覆うようにある白い透明なビニールのカーテン。
亮樹兄ちゃんがマスクをした。
ベッドのまわりに、透明なカーテンがあって、仕切りの代わりみたい。
ベッドと外で、全く別の世界に見える。


