あたたかいぬくもりに体全体がつつまれて、ゆっくりと耳をふさいだ手を離されていく。 「桜。」 あったかい声。優しい声。胸があったかくなる。 不思議とだんだんと息も落ち着いてきた。 思わず目を開けると、目の前に微笑んだ亮樹兄ちゃんの顔。あたしの体は、亮樹兄ちゃんにぎゅっと抱きしめられていた。 自然と耳や目を開けるのを許してる体。 トクントクンとリズムよくなるあたしの心臓は、たしかに“生きてるよ”っていう証だった。 しばらく、亮樹兄ちゃんにぎゅっとされてようやく落ち着きを戻してきた。