「亮樹兄ちゃん、なんで許可してくれたの?

ほんとはダメ... なんでしょ?先生だけならともかく、クラスのみんなの大人数でなんて。

しかも、あたし治療前だから安静にしなきゃいけないのに、絶対だめかと思った... 」





亮樹兄ちゃんは一瞬、びっくりしたように目を開くと、また笑った。




「そりゃ、桜も出たかったんでしょ?だったら、いいよって言ったんだよ。

まあ... でも他の人には... これね。ほんとはあんまりできないから。」



そう、人差し指を口に当てた。



わ、わかった... 。



「それに、クラスの子達や先生が行ってくれるのに、断れないでしょ?」



そう笑った。



「うん... ありがと。」





「けど!切り替えて、これからの治療も頑張ってもらわないと困るからね~。」





うん。わかってる。わかってるけどさ... 。


あたしは、卒業証書とアルバムをぎゅっと握りしめた。



「今日だけはさ、治療のこと忘れたい。卒業のことだけ考えてたい... 。」



みんなと同じ、寂しいなとか懐かしいなとか。そういう気持ちでいたい。


だって、一生に何度もない特別な日だから。



亮樹兄ちゃんは微笑んでうなずくと、静かに病室から出ていった。