亮樹兄ちゃんは、そのままあたしの背中をトントンさすりながら言う。




「さくらー?この間さ、頑張るって思ってくれたじゃん?」



ゆっくり話す亮樹兄ちゃんに、あたしは力なくうなずいた。


たしかに、思った。

けど... なんか怖くなっちゃった。




「俺、うれしかったよ?そう言ってくれて。

だから、俺も桜が大丈夫だって信じて治療してるからね。

もちろん、嫌なときは嫌って言えばいいし、辛いときは辛いって言えばいいよ。


けどさ... 頑張らなきゃ。桜が、治したいと思うなら頑張らなきゃね。」




治したい... そんなの、この病気になってから変わらない。


早く元気になりたいし、早く退院したい。

やりたいことも、いっぱいある。



...けど。


そうだよね。これを乗り切らなきゃ。

そんなの、叶えられない。



あたしは、亮樹兄ちゃんの目をみた。




「あたし... 頑張る... 我慢して治す... 」



すると、亮樹兄ちゃんはふふっと笑った。



「偉いっ!でも、頑張ることや我慢することは大切だけど、また自分の中に溜め込んじゃダメだよ?

......わかった?」



ほっぺをぐいっとつままれて。



「...わかったぁ。」



「よし。」




満足そうにうなずく亮樹兄ちゃん。