「亮樹兄ちゃんっ...!血、いっぱい出てるよ?いっぱい... 」
それでも、自分のケガにかまわずあたしをぎゅっとし続ける。
「だーいじょうぶ。」
それだけ言って。
「やだっ...!ッ... 亮樹兄ちゃん死んじゃやだよ...?やだ!」
だって、こんな血が出てるもん。
「桜... 大丈夫、このくらいじゃ死なないよ。わかった。...ちょっと落ち着こっか...。」
また息苦しくなってきて、亮樹兄ちゃんが背中をさすってくれる。
「はぁはぁ...ッ ごめんなさいっ...!ごめんなさいっ。」
「わかった。わかったから。今はしゃべらないの。よけいに苦しくなっちゃうよ?
ほら、ゆーっくり深呼吸... 。」
亮樹兄ちゃんがスーハーと真似するのをみて、あたしも必死で深呼吸しようとした。
久しぶりに触れる手は、あったくてやさしくて。
すこし落ちついてきたら、亮樹兄ちゃんはあたしの切った指をぎゅうっと止血した。
「んっ... いたい!」
けど、亮樹兄ちゃんは無言で処置をした。
消毒液は、いつもの倍くらいしみて、痛くて...
包帯でまかれた。


