亮樹兄ちゃんの息切れの音も、上から聞こえてくる。




「...桜?なにしてるの。」



その声は、部屋中に低く響いた。



あたしは亮樹兄ちゃんに目も合わせず、がむしゃらにカッターを握った。



「はぁ... はぁ... 」



キリキリッと刃を出すと、手をお腹の上に乗せた。


腕に刃を近づける。



もう、亮樹兄ちゃんがいるとかいないとか関係無かった。



体が... 勝手に動く...

あたしの意思は関係なく、勝手に...




「桜っ!!!」



そのとき、あたしはいままでに聞いたことないくらいの亮樹兄ちゃんの怒鳴り声が耳に聞こえた。



その瞬間にカッターを取り上げようと腕をつかまれた。



「やめてっ!!」



あたしの喉から、自分自身も聞いたことがない裏返った声が出た。