清の思いを他所に、琶子は市之助に話し掛ける。

「母とはどんなご縁で?」

「嗚呼」と市之助は頷き、遠い目をする。

市之助の説明によると、琶子の母親との縁は、母の父松衛門、つまり琶子の祖父かららしい。

「松ちゃんと私は年の離れた幼馴染でね。兄のように慕った松ちゃんには、本当に世話になった。言わば恩人のようなものだ」

恩人の娘の窮地を知った市之助は、すぐさま眠りの森を紹介し、二人を風子に任せた。

「なのに、あんなことになってしまって……」

市之助は、悔し気に拳でドンとテーブルを叩く。

「だから。私が琶子を引き取ろうと思ったのに、いつの間にか金成が後見者となり、眠りの森に引き取られていた……風子は何を考え、あんなことをしたのやらだ!」

「嗚呼、それなら、親父さんも首を傾げていました」

「だろっ! 引き取った本人が分からないんじゃ、世話ない! まっ、こうしてやっと会えた。OH! そうだ、連絡先を交換せねば!」