「桃花、榊原氏の一連の行動、見た? アレを『焼きもち』っていうのよ」

登麻里がマロンアイスを口に入れ、秋の味覚をしみじみと味わいながら言う。

「アッ、桃花知ってる! それ『嫉妬』って言うんでしょう」
「あらっ、難しい言葉を知っているわね。そうそう、それ」

桃花は二人の抱擁シーンを興味深げに見つめる。

「いいなぁ~、桃花もギュッてしてくれる人欲しいなぁ……」

登麻里の視線が桃花に移る。
羨まし気で寂しそうな顔に、嗚呼……と登麻里は気付く。
その瞳が本当は何を見ているのか……。

「そうね、現れるまで、この登麻里ちゃんがギュッってしてあげる。おいで」

登麻里が両手を広げると、パッと嬉しそうな笑みを浮かべ、桃花がその腕に飛び込む。登麻里は桃花を膝に乗せると、愛おし気に柔らかな髪を撫で、ギュッと抱き締める。

「登麻里ちゃん、優しい」

「ありがとう」と桃花がギュッと登麻里を抱き返す。

大人びて生意気だが……登麻里は桃花から香るミルクの匂いに、胸がジンと締め付けられる。

そして、清の胸の中で我に返った琶子は、猛烈な怒りと共に「いい加減にして下さい!」と彼を突き飛ばす。