二人のやり取りを聞いていた薫は大きな溜息を付く。

荒治療……? 全く! この男……大人なんだか子供なんだか……。

清の強引な態度に、一抹の不安はあるものの、この機を逃せば、もう琶子が外に出る機会はないかもしれない、と危惧し、薫も同意することにした。

「琶子、無理しなくていいのよ。でも、私もいい機会だと思うわ……外、出てみれば」

捨てられた子犬のような琶子の涙目……胸が締め付けられる。
嗚呼、この顔……弱いのよね……と薫は琶子をギュッと抱き締める。

が、それをベリッと剥す輩が一人。

「俺の女だ。触れるな!」

尖鋭の眼が薫を見る。
薫と琶子もだが、金成、則武、裕樹も、アレッ? と首を傾げる。

なんだそりゃ?
誰が誰の……女?
とっくの昔に、交際の下りは終わっていなかった?
本人無視して、決定か?
まさかだろ?

皆の疑問を他所に、清は薫から琶子を奪うと、自分の腕の中に琶子を抱き寄せる。
その光景に、若干二名を除き、唖然とする人々。