「イベントは二月だ。それまで俺がお前のリハビリに付き合ってやる。来週末、俺の家に来い! 迎えの車を寄越す」

決定事項のように淡々と言葉を発する清。
琶子は不思議なモノを見るように彼を見る。

どう考えてもこの人の世界観は私と違い過ぎる。
逆らいたいのに……あまりに違い過ぎる感覚に、こちらの方が間違っているのか! と麻痺した感情が躊躇する。

そう言えば……と琶子は薫の言葉を思い出す。

『榊原さんは世界中の人々を圧するキング系モテ男』……キング……王様か……確かに!

それでも……この人に反抗しても無駄だと分かっていても……。
でも……やっぱり無理だ!

「外に出られないって、分かって言っているんですか!」

琶子は零れ落ちそうな涙を堪えようと、唇をギリッと噛む。

「止めろ……」

清は腕を伸ばすと、琶子の顎に手を添え、親指で桜色の唇をソッとなぞる。

「そんなに噛み締めたら唇が切れるだろ」

その仕草があまりに温かくて……優しくて……琶子の瞳から一粒涙が零れる。

「何も心配いらない。ドア・ツー・ドアだ。ここから俺の屋敷まで車が運んでくれる。外に出る必要はない」

清の言葉に、もう一粒涙が零れ落ちる。