眠りの森のシンデレラ


「交際って、申し込まれた覚えも、同意した覚えもありませんが?」

本当に滅茶苦茶な人だ! と呆れ顔で琶子が言う。

「さっき、付き合おうと言ったら、ハイと返事したのは君だが」

清は琶子の顔を覗き込み、言っただろ! と確認する。
琶子はウーンと思い返し、アッと曖昧に返事したことを思い出し青くなる。

「清、誰の許可を得て宣っているんだ!」

怒りを押し込めた金成の低い声が、その場の温度を三度ほど下げる。
だが、清は全く動じず、飄々とした態度で金成に対する。

「成人同士の交際です。許可ではなく。承諾頂ければ結構です」
「今日会ったばかりで、何を言っているんだ!」

金成に向かって、清が不敵に笑う。

「おや、先日言ったではありませんか、今日で二回目です。それについ先日思い出したのですが、数年前、俺は彼女に会っています。三回も会えば十分では?」

清の言葉を唖然と聞いていた琶子の顔に怒が現れる。

「何勝手なこと言っているんですか!」

清を力いっぱい押し退けると、琶子はピシャリと言い切る。

「相手の意思を無視して、何が交際ですか! 横暴極まりない! 頼まれてもそんな人とはお付き合いしたくありません!」

ヒューッと桃花が未熟な口笛を吹く。

「登麻里ちゃん。琶子って言う時は言うねぇ、男前だねぇ」
「そうよ」登麻里がノンノンと人差し指を振る。

「弱々しいだけの女なんて魅力ゼロ。ミステリアスに多様な顔を持ってこそモテ女というもの」

「私みたいにね」と付け加えウインクをする。

「分かった? 覚えておきなさい」

「ハァイ」と桃花は軽く返事をし、ベリー尽くしのパイを頬張る。

そして、引き続き二人は琶子たちを観察する。