「ところで、ワインは探さなくていいのか」
「あっ、そうでした」
清の一言で、琶子は慌ててエプロンのポケットから用紙を取り出す。
「見せてみろ」
琶子からメモを取り上げると、清はサッと目を通し、無駄な動き一つなくリストのワインを揃える。琶子は呆気に取られながらも深々とお辞儀をする。
「ありがとうございます。いつもはもっと時間が掛かるんです。助かりました。また何かでお礼しますね」
清は涼しい顔をしたまま、さて、どんなお返しをしてもらおうか、と悪人顔になる。
清の妖しげな思惑など知る由もなく、琶子はワインを抱えると「行きましょう」と清を誘い、二人はガーデンに戻る。
「あっ、琶子、ありがとう。あらっ、清様もお手伝いして下さったの、ありがとうございます」
薫はワインを受け取るとラベルを確認する。そして、二本目のワインを手にしたところで、思い出したように、「そうそう」と琶子に顔を向ける。
「高徳寺さんが探していたわよ」
クイっと顎でガーデンテーブルの方を指す。
琶子が目を向けた先には、金成を中央に、深刻そうな顔をした則武と、キョロキョロと誰かを探すように視線を動かす裕樹がいた。
清は三人にチラリと視線を向け、ニヤリと笑うと徐に琶子の肩を抱き、彼女の顔を覗き込む。その距離わずか十センチ。


