「何だ? ああ、行く」

通話を終えると、清は琶子に視線を向ける。

「また会おう」
「アッ、ハァ……あの、お顔の色、良くなりましたね」

琶子は微妙な面持ちで、ぎこちなく口角を上げる。
清は自分の頬に手をやり、苦笑する。

コイツは本当に鋭い奴だ。

琶子は手早くマカロンとクッキーをラップに包み、手持ちの紙袋に入れる。

「……お土産です」

清は差し出された紙袋を見つめながら、フッと頬を緩める。

「君はお節介で面白い」

手の甲で琶子の頬に触れ、その手を離し難く思いながら、紙袋を受け取り、琶子に背を向けると、振り返る事無く歩き出す。

「近江琶子……」

込み上げる笑と共に、何かを期待するように清はその名を呟く。
琶子はたった今、清に触れられた頬に手を置き呟く。

「榊原清……訳の分からぬ恐ろしいプリンス」

彼の後ろ姿を見送りながら、また会おう……か、会いたくないな、と激しく鼓動する心臓の音を意識する自分に琶子は戸惑う。