「その一匹は頑張ったの! 戦い抜いた勝者なの! 選ばれし精子なの! 意味なんてどうでもいい。例えどんな理由であれ、状況であれ、命になり生まれた! それだけで十分なの」
ああ、そこに結び付くんだ、と裕樹はホッとする。
「生なる者たちは皆、神から祝福を受けた者たちなの。だからね、琶子、貴女の存在そのものが、もう意味あるものなの」
少々、宗教めいた台詞だが、そうれはそうだな、と祐樹は納得する。
登麻里の潤んだ瞳が、一生懸命耳を傾ける琶子を見る。
「そうよ」と薫も頷く。
「眠りの森の住人は貴女という存在に皆、助けられたわ」
「俺もだ。お前が味気ない生活に五感を与えてくれた。お陰で俺は血の通った人間になった」
清は琶子の肩をギュッと抱く。
「僕だって、琶子ちゃんのお陰で前に進めた一人だよ」
裕樹が軽くウインクする。
「ねっ、存在の意味なんて、こんなものなの。考えたって分からないわ。知らぬ間に人の役に立っていたり、反面教師になっていたり、自分より他者が意味付けてくれるものだと思うの」
そこで登麻里は言葉を切る。そして、清に少し視線を向け、ニヤリと笑う。
「まぁ、心配しないでも、これからは誰よりも榊原さんが、貴女に生きる意味を教えると思うわ。でしょう?」
それを受け、清は琶子に愛し気な眼差しを向ける。
「そうだな。そんなことを考えている暇もないほど、目まぐるしい人生になるだろうな」
おおよその見当が付く裕樹は、大きな溜息を付き、立ち上がると琶子の側に立つ。
「琶子ちゃん、ご愁傷様。ガンバ!」
ポツリ言うと、ファ~と大きな欠伸を一つし「じゃあ、僕、寝るね」とゲストルーム引っ込む。


