眠りの森のシンデレラ


深夜零時。高徳寺家の面々は既に眠りの夢界へと旅立ち、金成は「明日は早出だ」と自室に戻った。残ったのは清、裕樹、薫、登麻里、そして、琶子の五名。

「それでですね、ファンさんの言葉で一番嬉しかったのはですね『愛が見えました』です」

すでにワインの空ボトルは十本を超えていた。
琶子も限界を超えているようだ。
いつもは胸に仕舞い込んでいる言葉が、沁み出でるように零れる。

「その方がおっしゃったんです。ずっと自分は愛されている実感がなかったと。でも、『今ある』を読んで、周りを見渡し、愛に包まれていたのだと悟ったと。だから、彼女との結婚を決意できたのだと。そして、今、幸せだと」

琶子の瞳からハラハラと涙が零れ落ちる。

「だから、ちょっとだけ世間様の役に立っているのかなって今回思いました」
「いい話ね」

薫も目頭を押さえる。

「私、ズット自分を疫病神だと思っていました。どうしてこの世に生まれたのだろうと悲観ばかりしていました。この世にいる意味が分かりませんでした」

エッ! と登麻里、薫が琶子を見る。

「貴女、そんなことを思っていたの!」

途端に怒ったような薫の声が飛ぶ。
引き続き登麻里も口を開く。

「バカね。よく聞きなさい。一般的に、一回の射精で一億二千万匹から五億匹の精子が飛び出て、その一匹が卵子と結び付き命になると云われているの」

おいおい、何の話だ、と裕樹はギョッと登麻里を見る。