木漏れ日を浴びながら白樺の林を抜け、芝生広場まで来ると、また清の足が止まる。

躊躇いがちにサングラスを外し、ゆっくり辺りを眺める。

クリアになった視界に、真っ青な空と、その空へと続くなだらかな深緑の丘が目に入る。丘に数匹の羊がポツンポツンと佇んでいる。

瞳の片隅にいた子羊が、ヨチヨチ歩き出す。その姿を尖った視線が追う。

子羊のズット先に親羊が見え、その更に先には……空へと両手を広げる一本の大樹。目を逸らしたいのに……と清は思いながらも、神々しいその木に釘付けになる。

メェェェ。

呆然と見つめる彼の耳に、弱々しい子羊の鳴き声が届く。
それが合図のように、行きたくない! と拒絶する心と裏腹に、清の足は巨木へと歩き出す。

古木が「待っていたよ」というように、枝葉を揺らしサワサワと音を立てる。

「嘘だろ……」

大樹を目前に清は立ち尽くす。
信じられないというように目を見張り、息を飲む。

太い枝からぶら下がるブランコ。そこに座る人影。
ある筈のない、昔のままの光景が目に映る。

唖然と佇む清に、フワリと柔らかな風が纏わり付く。

「……ネネ」

封印した筈のアルバムが紐解かれ、その一ページがペラリと捲れる。