眠りの森のシンデレラ


それに気付いた琶子の瞳に勇気が漲る。

「ハイ! 永遠に! 榊原清さんに恋します! そして、それを糧に、これからも『愛』を綴っていきます!」

大声で強く意を表する琶子は、まるで新年の抱負を述べる子供のようだ。
じっくり、ゆっくり、言い方を変え聞くと、スゴク素敵な内容なのだが……。

お前は小学生か! と思わず突っ込み、金成は片手で目を覆う。
登麻里と薫は顔を見合わせ。何とも言えない深い溜息を付く。
舞台の袖では則武と裕樹がお腹を抱え笑い、則武の横っ腹を桔梗が抓る。

どうやら身内たちには不評のようだ。
その時、一人の男が動いた。

「琶子!」

突然舞台上に現れたその姿に、誰もが目を見張る。
琶子も思わず立ち上がる。

「清さん」
「俺も永遠にお前を愛す。ズット恋愛しよう」

しかし、清の心に琶子の言葉は響いたらしい。
シーンと静まる中、清は琶子を抱き締める。

「ワチャー、やっちゃったね」

「ああ、だが、狙い通りになった。バレンタインの今日、至極のシチュエーションだ! 最高のフィナーレだ」

チェックメイト! 則武はイベントの大成功を確信する。
裕樹もまた、この後、パーティーで披露する『ヒール・ミー』第一弾の成功を予感する。

第一弾はバレンタインデーに相応しく、リンゴにチョコをコーティングした『ポムポム』という名のドルチェだ。
リンゴを丸くくり抜き、濃厚で強烈なチョコレートをコーティングし、カラースプレーで彩を添えたそれは、イメージ通り琶子のような、瑞々しく可愛い仕上がりになった。

「ねぇ、きっと忘れているわよ。あの二人。インターネット配信されているの」

計算高い笑みを浮かべる二人に、冷静な桔梗の声が言う。

そのままキスでもしそうな二人を止めたのは、やはり名アナウンサーの鳳居京之助だ。

「では、ご紹介しましょう。本日の特別ゲストです。作家近江琶子さんの婚約者、皆さんよくご存じ、榊原ホールディングス副総帥、榊原清さんです」

パラパラと、一人、二人と拍手をし始め、やがてそれは耳をつんざくほどの大きさになる。拍手に加え、「おめでとう」の声が混じり始めると、会場は一気にお祝いムードに包まれる。