「もしかしたら私たちって、クローバーを侮っていた?」

「かもね」と薫は登麻里の意見に同意する。

「それに何、あのビデオレター。ごく普通の、祖父から孫へのお祝いメッセージだったわよね」

「本当、本当! 天下の市之助氏の、あの溺愛具合、半端なく可愛かったわ」

会見途中に流されたビデオレターは、琶子と清、二人に向け、市之助が贈ったものだ。これが意外な効果を呼んだ。
あの悪評ばかり先走っていた市之助の評判を一気に一掃したのだ。

だが、世間は知らない。
市之助が端からそれを狙っていたことを、その後のクローバーたちとの会話を。

「どうだ、私のお祖父ちゃんぶりは! なかなかだったろう? これでいつ曾孫ができても、お前たち、後ろ指差される心配はない」

「曾孫って、そんなこと考えて、あのビデオレターをマスコミ各社に送ったんですか!」

これには、清は勿論、則武も裕樹も驚き、ああ、やっぱり祖父だ、市之助だ、と脱帽した。

「それに、気が早いですよ」

そう言いながらも清は満更でもないようにニヤリと笑い、裕樹は目を輝かせ市之助をスカウトした。

「癒しのスウィーツと幸せなお祖父ちゃん、グッドな絵だと思いませんか? あのビデオレター僕に譲って下さい。アッ! いえ、この際、是非、うちとモデル契約しましょう!」

そして則武は、これでイベント成功は間違いなし! と心の中でガッツポーズを取った。