ローズホテル控室[二の間]は賑やかだった。

「おとといの薫、カッコよかったわよ」
「違~う! 綺麗だった! でしょう」

二月十二日、裕樹はレストランMと桜井薫との業務提携を発表し、今後、そこから生まれる癒しのお菓子シリーズ『ヒール・ミー』の存在を明らかにした。

このニュースは飲食関係のみならず、ブライダルやヒーリング関連の会社、そして、それに付随する機関にも激震を与えた。

「そして、昨日! あの榊原さんがあんなに男前だったなんて……」

ウットリする登麻里に、薫も興奮気味に声を上げると、両頬を押え、身悶えする。

「分かる! 昨日の彼、最高だったわぁ。『私は近江琶子さんを愛し、守り続けます』って、キャーッ! 私も言われてみたい」

そう、一昨日の激震冷めやらぬ中、開けて十三日、早朝、報道機関に届いた『婚約発表記者会見のご案内』に業界各社は震撼した。

清は前回記者会見で述べた『正式発表は二月』の言葉を守り、琶子との婚約を堂々とカメラの前で発表し、結婚の時期は今春予定だが、正式な日程は現在調整中だ、と述べた。

クローバーの中でもほとんど笑みを見せない清が、記者会見中、何度も見せた微笑みが、琶子を思ってなのは一目瞭然だった。その姿に、会見を見た全女性がメロメロの骨抜きになった。

そう、登麻里と薫も類に漏れず、会見中の清の姿にヨロメイタらしい。