「KTG出版のWEBサイト、その他諸々関連サイトが全てダウンしたみたい」

朝一で雑誌を買ってきた登麻里は、コアなる話題のページを広げ、テーブルに置く。

「えっと、謎の美女、榊原清の恋人は! 『今ある』の著者、近江琶子だった! って、そのまんまじゃない」

見開き部分にデカデカと書かれたタイトルを読み上げ、薫は、もう少し捻りが欲しかったわね、と皮肉を言う。

「それにしても狙ったように撮られているわね」

予告サイトと違い、雑誌に載った写真は正面から撮られたものだ。

「本当、誰が見ても琶子だわ」

薫は、肖像権の侵害よ、訴える? と真面目な顔で琶子を見る。

琶子は頬杖を付きながら、ボーッと雑誌のページを見つめる。
この写真、あの日だ。

「榊原さんって、二重人格? この顔何?」

写真の清は、見るだけでキュンとするほど柔らかな表情を浮かべていた。
その顔は、いつも琶子だけに見せる顔だった。

「きっと世の女性は、今頃、この写真を見て、今まで以上彼にメロメロになっているわよ」

登麻里と薫は写真を見ながら、「それにしても」と堂々巡りの会話を続ける。