「お待たせいたしました。こちらをどうぞ」
時枝事務局長が差し出したのは、一通の白い封書だった。
宛名に『榊原清へ』と書いてある。
「祖父の字だ」
封筒から便箋を取り出し、清は書かれた文字に目を走らす。
読み進める清の顔が、どんどん険しくなる。
「おい、何て書いてあるんだ!」
金成が心配そうに尋ねる。
「クソッ! あの狸ジジイ!」
清は読み終わった手紙を乱暴に金成に渡す。
「……おい、この最後の『追伸、金成、どうだ参ったか、ざまあみろ』って何だこりゃ、俺がここに来ることを予期していたってことか!」
「ああ、俺たちはまんまと祖父さんのお遊びに付き合わされた、ということだ」
「お遊びって?」
琶子は全く意味が分からない、というように怪訝な表情で清を見る。
「究極の策士だな。アッ、まさか、母親を隠したのって、琶子と会わせなかったから……俺への仕返し?」
「も、理由としてはあったのだろう。なのに、オヤジさんは俺と琶子の付き合いは認めた。クソッ、だから、あの日、居所を知らないと言ったのだ!」
清は悔しそうに、琶子の手に渡った手紙を睨む。
黙ってそれを読んでいた琶子は、フルフルと首を横に振る。
「お遊びなんかじゃありませんよ」


