一月一日、元旦の朝。

「おはようございます。榊原さん、起きて下さい。初詣に行きますよ」

清の枕元で琶子が声を掛けるが、清はウーンと唸るだけで、一向に起きる気配がない。

「置いていきますよ」

琶子が布団をポンポンと叩く。すると突然、布団から手が伸び、グイッと引かれた琶子は清の上にポスンと倒れる。

「あ」も「い」も言わせず、掛け布団越しに清は琶子を抱き締め、唇にキスを落とす。

琶子は仰け反るように顔を離し、言葉を荒げる。

「何をするんですか!」

琶子は懸命にその腕から逃れようとするが、全く歯が立たない。
やっと気が済んだのか、清は少し腕の力を緩めると、片手で琶子の後頭部を押え込むと、その耳元に甘く囁く。

「おはよう。ハッピーニューイヤー」

顔面に熱を帯び、琶子は小さく「明けましておめでとうございます」と応える。

「新年早々、お前を腕に抱いている……幸せだ」

清の腕が、再びギュッと琶子を抱き締める。

ほんとうにもう! と呆れながらも、清の腕の中で、同じように思っている自分が居ることに琶子は驚く。と同時に『世界の中心は愛』『最強の愛』『恋愛』……風子の言葉が蘇る。