清はアンティークのガラスキャビネットから、ワイングラスを二個取り出し、テーブルのワインを注ぎ、琶子に一つ渡す。

「……嫁はないわね。私の幸せはここにあるもの」
「そうね、私も。家族はここにいる」

登麻里と薫は顔を見合わせ、柔らかく笑う。

「あっ、やっぱり……」
「お前はいい! 話すな」

清は琶子の唇に人差し指を当てると、シーッと言葉を制し、フワッと笑みを浮かべる。

「お前の幸せは俺の隣にある」

清の言葉に、登麻里と薫がクスッと笑う。

「琶子、愛されてるわね」

薫に冷やかされ真っ赤になりながら、琶子はプッ頬を膨らませる。

「榊原さんの辞書には『照れる』という言葉は載っていないのですね」
「しかし、よく琶子をここまで改革したわね」

喜怒哀楽を正直に出す琶子を見ながら、薫がしみじみ言う。

「貴方たち二人は、強い縁で結ばれていたんだわ、きっと!」

登麻里はほろ酔い気分で「二人の運命にカンパーイ」とグラスを掲げる。