「貴女たちと過ごす年末年始も今年が最後ね」

登麻里はテーブル席で、里芋の皮を剝きながら、しみじみと桔梗を見る。

則武邸への引っ越しは、桔梗の経っての願いで、年明けとなった。

同じくテーブル席で、黙ってさつま芋の皮を剥く桔梗の代わりに、カウンター奥にいる薫が口を開く。

「本当、今年の夏までそんなこと思ってもいなかったのにね」

その目が桃花の方を向く。つられて桔梗と登麻里も見る。

琶子と桃花は、カウンター席で『花形に切った蓮根に明太子をどっちが綺麗に、早く、詰められるか』対決をしていた。

桃花が言い出したのだが、それがまるで則武のようで、正真正銘の親子だな、と三人は生温かな微笑みを浮かべる。

「私だって……。本当、何のために逃げていたのやら……だわ」

大きく溜息を付く桔梗の戸惑いも分からないわけではない、と登真理と薫は顔を見合わせる。

「終わった!」登麻里は最後の里芋を剥き終わり、歓喜の声を上げると、ボールを持ち、立ち上がる。そして、ポンポンと桔梗の肩を励ましの意味で叩く。

「これも運命……だったのよ」
「そうね。素直になるのに、桔梗には時間が必要だったのかもね」

登麻里と薫の言葉に、桔梗は、そうかもしれない、と小さく頷く。

二十歳で桃花を妊娠し、いくら家族の反対がなかったとしても、そのまま、あの高徳寺家に嫁いでいたら、きっとその重圧に押し潰され、私の精神は参っていただろう。

「偶然も必然。運命は偶然が重なり導かれたものって言われるわ。だから、眠りの森で、偶然、高徳寺さんに出会ったのは、やっぱり運命なのよ」

「そう、二人は固い絆で結ばれていた、ってことね。そこで、盗み聞きしている貴女もね」

薫が琶子を見る。