「……榊原さん、じゃあ、本屋さんに連れて行ってくれますか?」
「本屋?」

以前言っていた華麗な図書館巡りとか、世界各国美食巡りとか、豪華クルーズの旅とか、そんなものを漠然と思っていた清は耳を疑う。

「ハイ、私、以前から一度、自分の本が本屋さんに並んでいるところを見てみたかったのです」

ワクワクと目を輝かせ答える琶子に、なるほど、と清は欲無き琶子を見る。

「それから、もうすぐ新年を迎えます。初詣と……初売りバーゲン? というものを体験したいです」

ちょっと待て! と清は思った。

「悪いが、それは俺も未経験だ」
「あっ、じゃあ、眠りの森の皆と行きませんか?」

「ちょっと待て!」今度は口に出して言う。
「デートするのに、何故、保護者付きなのだ!」

「ちょっと待って下さい」今度は琶子が言う。

「お出掛けって、デートだったんですか!」

呆気に取られる琶子に、今頃何を言っているのだ、と苦虫を噛み潰したように顔をしかめる清。

この女、俺様をおちょくっているのか! と清は本物の俺様になる。