眠りの森のシンデレラ


「そう言えば、桃花ちゃんの姿が見えませんが」
「この雪の中、白雪姫のお散歩、則武と一緒にね」

天気予報は大当たりだった。窓の外は一面の銀世界だ。

「積もりましたね」
「でも、お日様が出てきたから、すぐに溶けそうよ」

琶子につられ、登麻里も窓の外を見る。

「ただいまぁ~」

そこに、元気な桃花の声と、キャンキャンと少し甲高い子犬の声が飛び込んでくる。

「ママ~、お腹空いたぁ。白雪姫もご飯だって」

その後ろから、則武が「おお、寒っ」と震えながら入ってくる。

「桔梗、悪い、熱々のコーヒーを頼む」
「二人とも、手洗いとうがいは済ませたの!」

桔梗の一声に、則武と桃花が顔を見合わせ、「おっ、恐っ」と慌てて洗面所に向かう。

「フーン、あの則武も奥方には敵わぬようだな」

清は面白いものを見た、とニンマリする。
桔梗は『奥方』の言葉に赤面する。

「……しっかり家族になっているじゃない」

登麻里は、ベーグルやサラダの乗ったプレートを丸テーブルに運び、安心したように笑みを零す。