「あっ、清、これは何でもないんだよ」
「榊原さん、いらっしゃい」
裕樹の慌て具合に対して、琶子は全く動じた様子もなく、カウンターに置かれたティッシュボックスを引き寄せ、チンと鼻をかむ。
「で、何をしていたんだ。おい、お前、泣いているのか!」
ツカツカと二人に歩み寄ると、清は鬼の形相で裕樹を睨み付ける。
「あっ、だから、誤解だって」
「コイツは俺のだ。泣かせていいのも、触れていいのも俺だけだ」
琶子の手を引き、腕に収めるとグイッとその肩を抱く。
「榊原さん!」琶子は真っ赤な顔で、肩に置かれた清の手をパチンと叩く。
「お前、コイツに抱かれておいて、恋人の俺を拒絶するとは、何事だ!」
「こっ、恋人……だっ、抱かれて……って……」
怒り心頭の清はアワアワする琶子に、いきなり口づける。
ムグムグと全身で反抗する琶子をあっさり捻じ伏せ、清はキスを深める。
あ~あ、見ちゃいられない、と呆れる裕樹は額に手を置き、これじゃあ先が思いやられる、と琶子に同情の目を向け、助け舟を出す。
「こらこら、琶子が死んじゃうよ」
清はその声で、ようやく唇を離す。ゼイゼイと唇を拭い睨み付ける琶子。
「人前で何てことするんですか!」
琶子の言葉に清がニヤリと笑う。
「じゃあ、人前でないところで、存分にしてやるから、待っていろ」


