誰にでも平等に訪れるクリスマスが、誰もが幸福な日だとは限らない。

「ああん、もう! 鬱陶しい。今日はイヴイヴよ! 何、このお通夜みたいな雰囲気」

眠りの森のキッチンで、桔梗は丸テーブルに突っ伏し、登麻里はその向かい側で、苦虫を噛み潰したような顔で腕を組み空を見上げ、琶子はカウンターテーブルのパソコン前でボー然としていた。

コンロ前でキャロット グラッセを煮詰めながら、薫は声を苛立てる。

「で、琶子は何があったのかしら?」
「……担当さんが、期限を縮めてきたんです。まだ、一行も書いていないのに」

琶子はメールを見つめ、盛大な溜息を付く。

「フ~ン、で、登麻里先生は何を悩んでいるのかしら?」
「スランプ。桔梗のことが気になって」

登麻里が桔梗に視線を向ける。
ああ、なるほど、それなら私も気になる、と薫も桔梗に目をやる。

「どうして会わないの? 桃花の父親でしょう? ちゃんと話しをなさい。あの子のためにも」

登麻里の声に桔梗が顔を上げる。

「もう! さっきからしつこい。放っておいて……」

怒っているのか哀しんでいるのか……複雑な表情だ。

「それに、彼じゃない! 父親はいないのよ」
「はぁ? あんたね、マリア様じゃないんだから、父親がいないはずないじゃない」

薫の言葉に登麻里も頷く。
琶子は妄想する。未婚の母マリア、父親は神。神の子……桃花!

「桃花って、神の子だったのですか!」