周りの様子など御構い無しに、琶子は熱々のクッキーを一つ摘み、口に入れる。
うわぁ、と花が咲いたような笑みを浮かべ、両手で頬を抑える。

「ウーン、美味しい! 頬っぺたが落っこちそう」
「あっ、ズルイ! 桃花もぉ」

桔梗から飛び降り、琶子に駆け寄るとアーンと口を開ける。
琶子は「ハイ、どうぞ」とその口に一つ入れる。

「こらこら、すぐに食べちゃ駄目! 冷まさないとサクサク……しない……」

薫は注意を促しながら、改めて琶子の全身に目をやる。

青&白のフード付きボーダーパーカーに白のサブリナパンツ。
そして、ざっくり結ったお団子ヘアーの下は……ノーメーク。

可愛いから、あえて突っ込みたくないが……と思いながら、普段と変わらぬ様相に、薫は眉をひそめ、やっぱり突っ込む。

「貴女はいつまでそんな恰好をしているの? お客様に失礼じゃない」
「ん? お客様……ああ、それなら金ちゃんが応対するって」

二個目のクッキーを頬張りながら、琶子が応える。
薫は「アンビリーバブル」と額に手を置き天を仰ぐ。

「会わないってどういうこと! ただのお客様じゃないのよ。あのハイスペックなクローバーよ! 眉目秀麗な超イケメンたちよ! 榊原清、高徳寺則武、水佐和裕樹、三人が一堂に介することがどんなに珍しく凄いことか分る?」

琶子はキョトンとした顔で訊ねる。

「クローバー? 何ですかそれ」