「ってことは、則武、彼女と結婚しようと思っていたの!」
「ああ、そうだ」
「女殺しの君が、女に殺されていたとは……」

ヒューッと裕樹が口笛を吹く。

「でも、どうして彼女逃げたんだろ? 突然だったよね」
「……今でも訳が分からない」

消沈したように則武は呟く。
記憶力抜群の清が思い出したように、嗚呼、と呟き、言葉を発する。

「六年前……お前に見合い話があったな……確か、剛堂グループの娘だ」

「アッ、キョミキョミと甲乙つけ難いストーカー女、蛇麻呂! キョミキョミが明るいストーカーなら、蛇麻呂は陰湿でねっとりとした闇のようなストーカーだったよね」

裕樹は、あの女、公家時代の麻呂みたいな眉していてさぁ、と蛇麻呂の名付け親は僕だと自慢げに言う。

「見合い話は確かにあった。社長になったばかりの時だ。お節介兄貴が、独身だと舐められるから、と持ってきた話だ。だが、好きな女がいる。結婚するならそいつとだ、とすぐ断った」

「断ったけど、相手は諦め切れずにストーカーになっちゃった、ってわけ? モテる男は大変ね」

薫が嫌味を込めて言う。

「……姫は悪魔のような悪い魔女に騙され、王子との仲を引き裂かれてしまったわけですね。赤ちゃんがいたにもかかわらず。悲劇だわ……悲恋物語だわ」

琶子が目に涙を溜め、ポツリと呟く。

清は琶子の遠い瞳を優しく見つめながら、またイカレ脳ミソは旅に出たのか、と琶子の頬を伝う涙を親指でソッと拭う。