それは数日前のことだ。薫と登麻里は騒がし過ぎるスキャンダルに、ジリジリと苛立ち、どうなっているんだ、と金成に詰め寄った。

金成は飄々と「想定内だ」と言い、「琶子と清のことは、しばらく黙って見守ってやれ」と想定外の意見を述べた。

ついこの間まで、金成は琶子の露出を嫌い、琶子に対し過剰なまでに干渉していた……にもかかわらず、手の平を返したように、則武の申し出を承諾し、清のアプローチを許容した。

二人には、百八十度変わった金成の態度は『謎』というしかなかった。

だが、二人にも一つだけ分かったことがある。
それは、金成が清に対しぞんざいな口をきくものの、琶子同様、清も恵愛して止まない存在だということだ。

「眠りの森にクローバーが現れてから、少しずつ何かが変わり始めた気がする」

薫の言葉に、登麻里は頷きポツリと呟く。

「運命が動き始めたのかも……」

眠りの森は、長い間、変化なく静かな時を刻んできた。
住人たちは、その中で心を癒し自己回復してきた。

薫にとっても、登麻里にとっても、眠りの森との出会いは、まさに『運命』そのものだった。