都心から東へ車で走ること四十分。

車窓を流れる街並みが、ありきたりな景観から歴史を感じさせる重厚で趣のある佇まいへと変わり始める。

この辺りは昔から、高額納税者が多く住み、豪邸が建ち並ぶことからお屋敷町と呼ばれている。

その中を前後黒のベンツに挟まれ、白のリムジンが滑るように走り抜けて行く。

乗車するは三人の男性。
若干二十九歳ながら、日本を牽引する大企業の代表者達。

彼等が向かう先は、シェアハウス『眠りの森』
古城のように周囲を堀に囲まれ、所有者も居住者も分からない、お屋敷町七不思議の一つに数えられる場所。

向かう相手は近江琶子(おうみわこ)。
目的はただ一つ、彼女を口説き落とすこと。

だが彼等は知らない。
彼女がある意味、一筋縄ではいかない手強い女だということを……。