いつかの放課後みたいに。

誰にも知られない様に、黒板の隅に書いた相合傘と碧人への気持ち。


あれは、普通のチョークで描いた事だけど。

今の私にとっては、碧人への気持ちを素直に綴ったものだった。


碧人と結ばれて。

私にとっては、黒板に記したことが本当になったのだから。


「今度だって、叶うかもしれない。全部本気の願い事を書いたんだから」

「涼香、私の事を忘れても。碧人の事を忘れてしまっても、恋をする事だけは忘れないで。誰かを好きになったら、素直に気持ちを伝えるのよ」


頷く私をレイは優しい微笑みで見つめている。

段々と薄らぐ黒板の文字は、音もたてずに消えてゆく。

その現象を見ていたら、やはり不安になり。

碧人に伝えておきたくなった私は、碧人の手を握り碧人を見上げた。


「碧人、ずっと碧人が好きだった。今は、もっと好き。10年後の私も、碧人の事が忘れられずに好きだと思う。もしも、同じ時を過ごしていない運命に変わってしまっても、絶対に探すから。私は碧人を探し出して、きっとまた好きになるから」

「涼香、俺だって。俺だって同じだ。またお前を探し出す」

「必ず、また出逢おうね」


どちらともなく、唇が近づき。

気持ちを誓い合う様に唇が重ねられた。