黙って、レイの前に手を広げ差し出す。
そんな私の行動を前に、碧人とレイは不思議そうに顔を見合わせた。
「レイ専用のチョークを、私に貸して」
「涼香? 私が言った事、分かったんじゃないの?」
「分かったよ。分かったうえで、試してみようと思って」
本当に記憶が消えないのか。
何処までリセットされてしまうのか。
レイにだってわからないなら、実際に試してみるしかない。
「何バカな事言ってんだよ。お前、オークと俺の努力も無駄にする気か?」
「無駄になんかしない」
無駄になんか、するつもりはない。
碧人とオークが出逢ったことも、私に気持ちを伝えようとしてくれていた努力も。
レイと私が出逢った事も、碧人に気持ちを伝える事が出来た事も。
全部、なにもかも。
私が忘れたくない事だから。
全て大切な思い出だから。
現実に起こった事を、消し去るなんてしたくない。
「私には全部、大切な事だから」
レイの手からチョークを奪い、私は黒板に思いのたけを書き記す。



