静まり返っている教室を見渡してみても、レイの姿は何処にもない。

まさか。

私が変なチョークの使い方をしてしまったから、レイは姿を消してしまったの?

もう、10年後の教室にレイは居ないの?


黒板も机も椅子も。

新調されてはいるものの、何一つ変わらない教室なのに。

レイだけが居ない。


10年後を覗きに来た時と変わらないのに。

どうしてレイは居ないの?


「……その声は、涼香?」


ふいに、黒板の上に設置されているスピーカーの上から、聞き覚えのある声がした。

その声の聞こえた方を見上げると、透き通る羽がチラチラと見え隠れしている。


「レイ!」


私の呼びかけに、レイはやっと顔を出し、私を確認すると羽を羽ばたかせ舞い降りた。

まじまじと私の顔を眺め、続けざまに碧人の顔を確認したレイは、呆れたような表情に変わり言った。


「もぉ。あんた達、また来たの? そう何度も27歳の身体を自由に使っていいと思ってるの?」

「レイ、あのね……」

「分かってるわよ。中身は10年前の二人なんでしょ? ついこの前、帰ったと思ったのに。また来るなんて。全く何考えてるのよ。また何かあったの?」