「本当に行くつもりか?」
「うん。碧人も付き合ってくれるでしょ?」
訊ねた私に無言で答えた碧人は、私の手をそっと握った。
左手には碧人のチョーク。
大丈夫。
今度は、碧人と一緒。
10年後に行っても、私は碧人と一緒に居るはずだから。
私は碧人にチョークを手渡す。
碧人はそれを受け取ると、黒板にチョークでゆっくりと描いた。
【10年後の教室】
碧人の書いた文字は、光を放ち黒板にゆっくりと溶け込んでゆく。
ギュッと繋がれた碧人の手を離さない様に、私は碧人の腕にしがみついた。
「気をつけろよ」
「涼香、待ってるから」
碧人と私の身体は、黒板から放たれた光に包まれ、オークとレイの声が遠くなってゆく。
「目を開けたら10年後だ。離れるなよ」
「う、うん。大丈夫」
碧人の手は私を包み、そっと引き寄せられる。
私は碧人に抱きしめられたまま、10年後に向かった。