注目を浴びているレイは、少し恥ずかしそうに碧人に声をかけた。


「いつから私の事が見えていたの? 10年後を覗きに行った涼香をアナタが追った、あの日よりも前から知ってたの?」

「知ってたよ。俺は入学した当初、オークと出逢ってたから」

「そう……だったの」


動揺しているレイを、碧人は手招きをして黒板前に招く。

レイは碧人に引き寄せられるように、抵抗もせず素直に碧人の前まで飛んで来た。


「なぁ、ひとつ質問があるんだけど」

「なぁに? そんなに前から、私の存在を知られちゃってたなら、もう逃げも隠れもしないわ。聞きたい事があるならどうぞ」


どことなく開き直っている様にも見える、ヤケクソっぽい口調で答えたレイに、碧人は訊ねた。


「オークと一緒に、妖精の世界に帰ろうとか、帰りたいとか。考えた事ないのか?」

「……ないわ」


この教室にはレイが居て、見張っていなければいけない。

黒板とチョークを守るのがレイの仕事だと、碧人に力強く答えたレイ。


「涼香、チョーク出して」

「え?」