うわぁぁ。

言っちゃったよっ。


恥ずかしいのに、碧人に抱きしめられたままじゃ、逃げる事さえ出来ない。

カーッ。と顔から火が出そうなほどに、全身が火照っている。

この状況をどうにも出来なくて、私はギュッと目を瞑った。


「逃げられなくて良かった。やっと、涼香の気持ちが聞けた」

「?」

「涼香の気持ちが聞けなかったら、いつまでも想う事になっちゃうとこだった」

「いつまでも……って?」


訊ねた私から離れた碧人は、私の手を取ると、クルリと身体を回転させた。

向き合う碧人と私の距離は、30センチ無いくらい。


「涼香の気持ちを聞けないまま、この先も。俺は涼香だけを想って過ごすはめになるとこだった。って事」


碧人の手元に、七色のチョークがある限り。

その度に、またチョークを使って、私の気持ちを聞こうとしただろうと。

そして、その度に私に逃げ出されるのだろうと。


「そのうち面倒になって、諦めたりしないの?」

「するわけない。こんな長い間、片思いしてたんだから」

「……へんなの」


クスッと笑いながらも、私の心はあったかい。

なんだろう。

不思議と感じている、この気持ちは。