「ごめんじゃない! この前だって廊下でっ」

「あれは、どう考えても合意の上だろ。そういう雰囲気だったじゃん」


そうなんだけど。

そうだったんだけどね。

でも、やっぱり今のは突然過ぎて。

しかも妖精の目の前でとか、あり得ないでしょっ。


「碧人のバカッ」


プイッ。と後ろを向き、碧人に背を向ける。

そんな私は、碧人にギュッと後ろから抱きしめた。


「過去も未来も、涼香が好きだって、思い知らされるばかりだった」

「碧人?」

「未来で俺の気持ちを伝えても意味が無いと思ったんだ。俺たちは今を生きてる。今、この瞬間も涼香の事が好きだって伝えなきゃ、意味が無いって分かったんだよ」


今想っている事を伝えなければ、楽しかった過去も、ただの思い出と変わり。

これから訪れる未来は、変える事が出来ないと。


「ただの幼馴染は今日でおしまい。何時だって、俺にとっての特別な女は涼香しかいなかったし、今後もいない」

「碧……人」


抱きしめられている背中から、碧人の鼓動を感じる。

ドキドキと、とっても早い心臓の音は、私の気持ちを後押ししていた。


「……私……も。碧人が好き。ずっと、ずっと前から好きだった」