「涼香が教室でチョークを使った後に、あの妖精に涼香が10年後を覗きに行ったことを聞いて、俺は後を追ったから」

「言ってる事が、よく分かんないんだけど……」

「だから、幻想じゃないって言ってんの。現実。幻想だった半分は俺が現実にしてたから。全部現実に起こってたこと。分かった?」

「……分かんない」

「ぷっ。バーカ」


碧人の手がコツンと頭を小突く。

私は小突かれた頭を擦りながら、碧人を見上げる。


「なによ、バカって!」

「分かんないなら、分かんないままでいいよ。10年後も同じことするんだから」

「同じ事って……?」


ふふっ。とほほ笑んだ碧人は、私の髪を撫でる。

髪に絡んだ指は、静かに首元へと落ちてゆき。

私の唇には、碧人のキスが落とされた。


「涼香が俺に気持ち教えてくれれば、未来は変わる。今、この瞬間から。涼香が幻想だと思ってる10年後が本物になるって言ってんだよ」


碧人の触れた唇を、私は両手で覆う。

今、碧人は何した?

どうして急にキスなんてしたの?


「わ、私の気持ち聞いてないのに、普通……。キスとかする⁈」

「あー……。そっか、ごめん」