そんな私の両手を優しく包み込む手は。
塞いでいた耳から、そっと私の両手を外した。
閉じていた目を開けると、そこには碧人がいた。
どうして碧人が私の目の前に居るのか分からない。
繭の告白を聞いて、既に碧人は答えを出したという事なの?
視線を碧人の周囲に向ける。
さっきまで屋上に居た繭が居ない。
これは、どういう事?
何を意味しているの?
私は、視線を碧人に向ける。
確かに目が合った瞬間、碧人は私に言った。
「いつになったら、俺は涼香の気持ちが聞けるんだよ。俺は、何回同じことを繰り返さなきゃいけないんだ?」
「碧……人?」
「少しだけ、前とは状況が変わったと思ったのに。いい加減に出て来いよ、オーク!」
「オーク?」
そう言って、周囲を見渡す碧人と私の前に、ポンッと急に姿を現したのは小さな妖精。
なぜ、それが「妖精」だと、私がスグに判断出来たのかという答えは、簡単なこと。
私だけが見えているレイと、同じような格好をしていたからだ。
ただ、その妖精はレイと違い。
ブロンドの短髪に、ブラウンの洋服を身に纏っている、男の子だった。
透き通るような羽で飛び回り、綿毛の付いた靴を履いている。
「碧人、この子は……?」
「涼香にも見える? よな。お前も、教室で妖精と話してたし。七色に輝くチョークも手にしてたからな」



